北朝鮮の今後の動向を探る
北朝鮮がまたミサイル発射を準備しているとのニュースが流れている。国連安保理において北朝鮮制裁決議案の採択は、中国側の要請で延期された。日米は最終的には決議案の採択を目指すとしているが、北朝鮮がミサイル発射を取り止め6ヶ国協議に復帰すれば、国連での制裁決議は見送りになるかも知れない。
今回流れているミサイル発射準備のニュースは、その発射取り止めの取引材料とするための作業ではないのか、といった見解もある。しかし、このようなミサイル発射で恫喝して、少しでも有利な条件を引き出させようとの魂胆には恐れ入るばかりだ。
テポドン2についても最初から米国との交渉が目当てであったと考えられる。「米国がミサイル発射を憂慮するなら、交渉を通じて問題の解決を図るべきだ」との北朝鮮の発言にそれは表われていた。
しかし、一体誰が7発ものミサイル発射を予測出来たであろうか―。この間、テレビに北朝鮮専門家の大学教授や評論家、軍事評論家が出演したが、誰一人として事前にそれを予測した人はいなかった。
それらの人々も今回のミサイル発射について、それぞれの立場でその意図を探る発言をしているが、どれもなるほどと思えるものはなかった。閉ざされた国家の独裁者の考えは杳(よう)として伝わってこない。
しかし、この間の北朝鮮の動向を注意深く見てみると、どうしても理解に苦しむことがある。それは労働党と軍の間で、何らかの軋轢が生じ、金正日がそれをコントロール出来なくなっているのではないかという疑問である。
まず、ミサイル発射前日の4日に、日本の朝日新聞、読売新聞、共同通信、NHKなどが平壌入りをしていた。これは朝鮮総連がお膳立てしたもので、明らかに拉致問題の幕引きを狙ってのものだった。
この訪朝のお目当ては何と言っても、横田めぐみさんの元夫の金英男氏との共同記者会見だった。先の金剛山における韓国の母親と姉との再会では、意図的に横田めぐみさんの話題は伏せられた。
前回の記者会見は最初から第二幕が仕組まれていたその第一幕でしかなかった。前回の金英男氏の会見では、横田めぐみさんに関する質問はしないように韓国のマスコミは言い渡されていた。つまり、今回の日本のマスメディアを呼んでの共同記者会見に相当力を入れていたと考えられる。
しかし、このマスコミ工作は5日未明から始まったミサイル発射で吹き飛んでしまった。記者会見場に現れた朝鮮労働党の幹部候補生と見られる外務官僚は「軍部のやることは知らない」と苦虫をつぶしたような顔で応えるしかなかった。
これはどう見ても労働党の幹部らが知っていたとは思えない。彼らは今回の記者会見を開くことで、行き詰っている交渉を少しでも前に進めたいと思っていたはずだ。
しかし、それを知らないはずのない人民軍はミサイルを発射した。これはどう見ても外務官僚に対する挑戦であり、そのような交渉の成果など最初から当てにしないというメッセージでもある。
この同時進行した北朝鮮の外交姿勢と軍事的挑発に整合性は全く感じられない。考えられるとしたら、それは一つしかない。これまでの古今東西の歴史を見ても、このような情況とは政権内部における権力闘争の兆しである。
北朝鮮の独裁体制は朝鮮労働党と人民軍の二本立てであったが、先軍政治ということで、実権は軍部が握っている。これを快く思わない内務官僚・外務官僚らがこれを機に動き出すとも限らない。
北朝鮮の内部崩壊が軍の暴走で始まってしまえば最悪の事態が予想される。中国もロシア、韓国、米国も今後の動向を読み切っていないだろう。勿論、日本も同様である。
かつて「軍部の独走」を許した経験を持つ日本は、今日の北朝鮮から何を読み切らねばならないか―。それはそのような独走が戦争への道に必ずつながるという歴史の鉄則である。
もはや戦争は避けられないという覚悟を国民に知らしめるべきであり、そのための準備を怠らないことである。
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写真:日米合同演習における自衛隊艦船のミサイル発射訓練/北朝鮮がミサイル発射で威嚇する中、日米同盟の強化は望ましい
写真:国連安保理に北朝鮮制裁決議案を提出した日米両国連大使