
同盟関係の強化なる国益と反省点
いよいよイラクに展開する陸上自衛隊の撤収作業が開始された。およそ2年半に及ぶ南部サマワでの復興支援活動に従事していた陸自の軽装甲機動車など車両十数台を積載した最初の大型トレーラーなどが25日、宿営地よりクウェートに到着。約600人の隊員の撤収作業は7月の中旬頃までに完了させ、8月の帰国を目指すという。
この度の陸自撤収の決定は、南部の治安維持を管轄する英国が、治安権限をイラク側に移譲したいとの意向を示したことを受けたものであるが、今月7日に米・イラク軍の空爆によってアルカイダ指導者・ザルカウィ掃討作戦の成功と無関係ではないのではないか。
イスラエルに滞在していた然る国際ジャーナリストは次のように解説する。
「ザルカウィはスンニ派によって米軍に�倏笋蠹呂気讚瓩泙靴燭諭3姐饋佑砲靴謄ぅ薀�国内のテロ組織リーダーであったザルカウィはイラクを�狎鐓讚瓩箸靴�見ていませんでした。
確かに米兵のみを狙って自爆テロを遂行するというのは難しい。だからシーア派のイラク人は言うまでもなく、その他の一般市民を巻き込んでも止むを得ないとの考えの下に各地で自爆テロ作戦を遂行したのでしょう。結果、イラクが廃墟になろうと彼にとっては関係ありませんし、それ自体が目的だったでしょうから。
しかし、これによってザルカウィは自らの首を絞めましたね。そうした焦土作戦とも言える、なりふり構わぬザルカウィのやり方は彼を支援していたイラク人からも反発を買い、彼の動向の詳細が米軍側に洩らされる事態を招いたのです」
ここがイラクの今後を左右する分岐点だったのだろうか―。イラク・アルカイダは亡きザルカウィの後継者を選出し、報復声明も発表した。再び国際ジャーナリストが話す。
「スンニ派が米国に協力する姿勢を示しました。如何にアルカイダと言えどもイラク人の支持が無くてはイラク国内で動くことは難しくなります。今後も散発的な自爆テロは起きる(現に起きている)でしょうが、これでイラクも落ち着いてくることは間違いありません」
イスラム原理主義勢力の拡大・浸透による米軍駆逐という大義よりも、新生・イラク国家の建設に賭ける希望が勝ったということだろう。極端な破壊主義者が自滅の道を辿るのは古今東西変わらぬようだが、復興支援に取り組む各国の総力がテロリストの自壊を導いたと信じたい。
さて、日本政府の陸自撤収決定を受けて国内の反戦団体は「遅過ぎた。自衛隊は本当にイラク市民の役に立ったのか」とする疑問を投げかけて批難しているようだが、教育施設や水道設備の整備・拡充など、その貢献は目に見える形で現れているのではないか。しかし、それ以上に問われるべきは復興支援なる派遣によって如何に日本国の国益に適ったかということだ。
−日本の兵士が一歩でもイラクの地に踏み込めば、日本の心臓部を攻撃する−
これは自衛隊の派遣が決定された直前、国際テロ組織アルカイダを名乗る組織から、日本の報道機関に届けられた犯行予告で、多くの国民に少なからぬ衝撃が走っただろうが、もとより軍事基地を提供し、米国との関係が深い日本がテロの標的になることは十分に予測されていた。この時、小泉純一郎首相が「テロの脅しには屈さない」との声明を発表したことを記憶しているだろうか―。かつて戦後の歴代内閣でこれほど強硬姿勢を示し得た宰相を他に知らない。世論に危機感を持たせる意味でも、政府に入国管理を徹底させる意味からも、こうした声明は十分に国益に適っていたと言える。
反戦団体は「復興支援とは名ばかりで、自衛隊が多国籍軍の一員として存在すること自体が目的だった」と批難するが、中国や北朝鮮など共産主義独裁国家の直接的な脅威に晒される日本の現況を考えた場合、米国をはじめ英国やオーストラリアなど自由と民主主義を旗印とする国家群との��海洋同盟�瓩旅獣曚郎能斗彁�項であることは論を俟たない。
ある現職自衛官は「個人的に派遣には反対だった」としながら、次のように自衛隊派遣と撤収を総括した。
「日本国としてイラクへの派遣は止むを得なかったとしても、中東そしてインド洋に自衛隊が展開していたわけですから、輸送海路を確立する名目で東南アジアの海域に出没する海賊掃討や台湾海峡における有事の際の海上交通路構築など、イラク派遣という口実の下に出来たことはあったはずなんです」
同盟関係の強化を図ることに成功を治めたものの、主体的な戦略を立案・遂行し得るか―、これが今後の最たる課題であり、約2年半に渡る自衛隊イラク派遣の反省点と言えるだろうか。
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